フィクションです

思い出だけが取り残されて

 

 

ドラッグストアや洋菓子店、よく行っていたスーパーすらもシャッターが下りていて、あったはずのボロ家はいつのまにか取り壊されて更地になっていた 昔よく遊んでいた公民館のブランコやすべり台も綺麗さっぱり無くなって、その代わりに、田んぼと畑で囲まれていたはずの実家の周りは、知らない家ばかりできていて、そこはもう小さな住宅街だった

地元を出て、たった数年しか経っていないのに、帰省するたびにわたしの知らない町になっていく

 

小さい頃は全部が大きく見えていたのに、今じゃその全部が小さくスカスカに感じて、地元が田舎であることを嫌でも思い知らされる

一緒に育った友達は進学やら就職やらで、もうほとんど地元には残ってない まあわたしもそのうちの1人なんだけど

東京にいると「地元に帰りたい」ってよく思うけど、それは生まれ育ったあのときのあの町で、いつでも会える友達がいたからであって、わたしは小学生のあの頃の思い出に縋ってしまっている だから地元に帰ってくると胸がギュッと苦しい

 

変わらないことなんて何一つないのに、いつまでも続くと思っていた日々が、いまこんなに恋しくなるなんて思いもしなかった

可愛くて仕方なかった実家の飼い犬だっていつかはいなくなってしまうんだ

こうやって少しずつ何かを失っていく それでも進まなくちゃいけないことが少しだけつらい