フィクションです

2020-01-01から1年間の記事一覧

大事なこと

「今まで何回も会ってセックスしてきたけど、この前初めて手を繋いでくれたじゃん。そっちは覚えてないだろうけど、あれすごく嬉しかったんだ。」 「覚えてるよ。こっから駅までの道でしょ。」 「え、覚えてるの!てか意識して手繋いでくれてたんだ!無意識…

22:38の山手線にて

入れ替わり立ち替わりの環状線に ぽつんと取り残されたビニール傘みたいに どこかに置き忘れたわたしの感情 こんなに人が溢れているのに 孤独を感じるのはどうして 愛もクソもない生活 幸せがなにかを本当はわかっている それでもわたしはただずっとこうやっ…

当たらない宝くじ

「宝くじが当たったらどうする?」 わたしとあなたの鉄板ネタ。 あなたはたしか「喫茶店を営みたい」とか言ってたね、最初は。 わたしは、「地元に家建ててサモエドと2人暮らし〜!」なんて言ってたかな。 そしてサマー、年末、その時期が来る度に「宝くじが…

GOING STEADY

中学生の頃、わたしが憧れていたあの子は、明るくて、いつも笑顔で、気づけばその子の周りには人が集まっている、そんな子だった。 わたしは話す友達もいないから、教室の隅で音楽を聴きながら、やり過ごす毎日だった。 だから、そんなわたしにとって、彼女…

パリス

田舎にしかないコテージ式のラブホテル、そこで久しぶりに彼と待ち合わせをした。 「元気にしてた?」という彼の問いに、「はは、どうかな。」と苦笑いをして答えた。「お前も苦労してんだな。」と、何かを察して笑い返した彼は、学生時代に好きだった彼その…