フィクションです

歯ブラシ

 

別れる直前は嫌なところしか見えていなかったのに、実際に別れてから彼の好きだったところを思い出す

 

知らない音楽をたくさん教えてくれたこと(彼は教えてるつもりないだろうけど)、わたしが彼のことを褒めているSNSの投稿をこっそりスクショして保存していたこと、猫にはすごくすごく優しくて赤ちゃん言葉で話しかけてしまうところ、わたしが行きたいところに「めんどくせえ~」って言いながら、結局自分の方が乗り気になってわたしよりも色々調べちゃうところ

 

彼の不器用な愛情表現が憎くて可愛くてしょうがなかったことを思い出す

いま思えば安心を教えてくれたのは彼だった

日記に書くほどではない緩やかな幸せを日常を与えてくれたのは彼だった

 

彼から告白されたとき、ずっとずっと忘れたくないって思うくらい嬉しくて、でもそれも無くなっちゃうくらいの月日が経ってなんだか全部呆気なくて

 

未練はないけど、けどね

それでもすこしは寂しいと思っているよ

一人で寝るダブルベッドは快適すぎて逆に困るよ