「今まで何回も会ってセックスしてきたけど、この前初めて手を繋いでくれたじゃん。そっちは覚えてないだろうけど、あれすごく嬉しかったんだ。」
「覚えてるよ。こっから駅までの道でしょ。」
「え、覚えてるの!てか意識して手繋いでくれてたんだ!無意識かと思ってた!」
「うるせーよ、もう恥ずかしいから寝る。」
そう言ってわたしの方に向けた背が恋しくって、たまらなくって、強くギュウッと抱きしめた。
セックスよりも外で手を繋いで歩くこと、そっちのほうがわたしにとってはずっと大切で特別なことだった。
見た目がタイプとか、趣味が合うとか、そういうのももちろん大事だとは思うけど、こういう価値観が一緒ってことが付き合ってくときに何よりも大事だなってわたしは思う。
そう思っていたら、彼がまたこっちの方を向いて「好き」と言ってくれた。「わたしも」と言った。
一緒に美味しいものを食べて、しょうもない話をして、たくさん笑って、それができるだけ長く続いたらいいなって、これからもよろしくねとか、恥ずかしいから言わないけど思ってはいるよ。
その夜は、初めて彼の隣で安心して眠れた気がした。