フィクションです

過呼吸とテスト

 

ふと泣きながらテストを受けたことを思い出した。

 

中学2年生のときに、わたしはめちゃくちゃマセガキだったので恋愛をしていた。♡両思い♡みたいな感じじゃなくて、しっかりグロテスクな恋愛をしていた。

 

どの季節かは忘れたけど、後にも先にもこの人しかいないと思った当時の彼氏が、保育園から仲良くしてたわたしの親友と浮気してて、それがまあすごい裏切られ方で、14歳で未熟だったわたしには流石にダメージがデカすぎた。

 

ショックで泣いて、泣き過ぎて過呼吸になって、でも誰にも言えなくて、すごく苦しかった。

その後もずっと胸が締め付けられるような感覚で、意識しないとちゃんと呼吸ができないようなそんな状態だった。

 

そして確かその時期はテスト期間中で、そんな状態でもテストは受けなくちゃいけなかった。遅刻して登校したのか、その辺の記憶は曖昧だけど、みんなと同じ教室でテストを受けるのはキツかったから、別教室で受けさせてもらった。わたしと似たような不登校気味の男の子も1人、同じ教室でテストを受けていた。

 

テストが始まって、できるだけ無心で解いた。が、解き終わった瞬間、頭の片隅にあった嫌な記憶が脳内を支配して、グルグル回り始めて、またどんどん呼吸の仕方を忘れて、わたしは思いっきり過呼吸を起こして泣いていた。

ただそれに気づいているのは同じ教室でテストを受けている不登校気味の男の子だけで、わたしはその男の子の目も気にせず泣いた。というより、呼吸ができないことが苦しくて泣いていた。鼻水もボタボタこぼれて最悪な状態だった。ただ他人の目を気にする余裕すらなくて、呼吸することで精一杯だった。

 

すると、ふとティッシュが目に入った。その男の子が教室の隅にあった箱ティッシュを何か声をかけるわけでもなく、わたしの机にそっと置いてくれていた。わたしは少しずつ少しずつ呼吸を取り戻して涙を拭いた。気づいたらチャイムがなって、先生がテストを回収する頃には、涙は収まり机にたくさんのティッシュがあるだけだった。男の子にありがとうを伝えようとしたが、男の子は教室をいち早く出て行ってしまっていた。

 

その男の子とは、テスト以降、顔を合わせることはなかった。

いま思うと、あんなに取り乱して人前で泣いたのは最初で最後だった。男の子からしたらテスト中に泣き出すの訳わかんないだろうし、わたしはめちゃくちゃな醜態を晒したし、すんごい恥ずかったなと思う。でもそのときに先生とかを呼ばずに、ティッシュを差し出してくれただけで、本当によかった。

 

あのときの男の子の優しさとか、今になってすごく胸に沁みる。不器用なりのさりげない優しさ、ああいう優しさを持ち合わせた人間にわたしもなりたい。

 

あとそして、過呼吸は苦しいからもうできるだけなりたくない。